- さる
- I
さる(助動)〔中世末から近世へかけて用いられた語〕四段・上一段・下一段・上二段・下二段活用の動詞の未然形, カ変動詞の連用形に接続する。(1)軽い尊敬・親愛の意を表す。 …なさる。
「あれ見〈さい〉なふ, 空行く雲のはやさよ/閑吟集」「肴あぢやうにつん出してくれ〈さい〉/滑稽本・膝栗毛 3」
(2)軽くののしったり卑しめたりする意を表す。 …やがる。II「天の網が来(キ)〈さつ〉た/狂言記・武悪」「出〈さら〉にや爰(ココ)へ引ずり出す/浄瑠璃・関取千両幟」
さる【去る】〔動詞「去る」の連体形から〕時などを表す語に付いて, 以前の, 過ぎ去った, の意を表す。⇔ 来たる「新任の大使は~二日に着任した」IIIさる【去る・避る】※一※(自動詞)(1)今までいた場所・地位を離れる。「故郷を~・るのは忍びない」「三〇年勤めた会社を~・る」「社長の職を~・る」「台風が~・ったあとの青空」
(2)ある時期が過ぎる。 過ぎ去る。「夏が~・って秋になる」「私の青春はもう~・ってしまった」
(3)ある状態・事態がなくなる。「危険は~・った」「一難~・ってまた一難」「痛みが~・らない」
(4)へだたる。 (ア)空間的に, ある場所から遠くへだたっている。 距離がある。「都を~・ること二百里」「理想を~・ることはなはだしい」(イ)時間的に, ある時点から過去へさかのぼる。 「今を~・ること三百年」
→ 去る(連体)(5)(サ変動詞の連用形に付いて)すっかり…する。「無視し~・る」
(6)(季節や時を表す語について)ある季節・時期になる。「秋~・らば黄葉(モミチ)の時に春~・らば花の盛りに/万葉 3993」
→ 夕さる(7)進行する。 変化する。「たとひ時移り事~・り/古今(仮名序)」
※二※(他動詞)(1)遠ざける。 しりぞける。 なくなす。「俗念を~・る」「迷いを~・る」
(2)妻を離縁する。「妻を~・る」「~・られるのは女の恥だのって/化銀杏(鏡花)」
(3)避ける。 よける。「道も~・りあへず花ぞ散りける/古今(春)」
(4)辞退する。 ことわる。「いとことに~・り聞え給へるを/源氏(紅葉賀)」
(5)連歌や連句で, 句をへだてる。→ 去らず︱慣用︱ 世を~避らぬ別れ避けることのできない別れ。 死別。「老いぬれば~のありと言へば/伊勢 84」
去る者は追わず〔春秋公羊伝(隠公二年)「来者勿拒, 去者勿追」〕去ってゆく者は無理に引き止めない。去る者は日日に疎(ウト)し〔文選(古詩十九首)〕死んだ者のことは月日がたつに従って次第に忘れ, また親しかった者も遠ざかれば, 次第に交情が薄れる。IVさる【曝る】※一※ (動ラ四)長い間, 風雨や日光に当たり, 色があせたり朽ちたりする。「身を投げ, 骨を~・りて/霊異記(下訓注)」
※二※ (動ラ下二)⇒ されるVさる【然る】〔動詞「然(サ)り」の連体形から〕場所・人を漠然とさし示し, また物事を漠然と表現する時に用いる。(1)ある。 とある。「~方面よりの要請」「~人の御落胤」「~所に」
(2)相当な。 しかるべき。「別当入道~人にて/徒然 231」
(3)そのような。 そんな。「~さがなきえびす心を見ては, いかがはせむは/伊勢 15」
→ さるもの(連語)→ さるかた(連語)VIさる【猿】(1)霊長目に属する人類以外の動物の総称。 顔に毛が少なく, 手の指が発達し, すぐれた知能をもつ。 狭義にはニホンザルをさす。 古くから, 神聖視され, 馬の守護神とされた。 ましら。(2)小利口な者をののしっていう語。「~まね」「~知恵」
(3)戸の框(カマチ)や桟に取り付ける木片あるいは金物で, 敷居や鴨居(カモイ)・柱などの穴にさしこみ, 戸締まりをする仕掛け。(4)炉の自在鉤(カギ)の高さを調節する仕掛け。(5)江戸時代, 風呂屋にいた遊女。 湯女(ユナ)の異称。~に烏帽子(エボシ)人柄に相応しない服装や言動をたとえていう語。~の尻(シリ)笑い自分のことを省みずに, 他人の欠点をあざわらうことのたとえ。~も木から落ちる木登りの上手なはずの猿も, 時には失敗して落ちる意。 その道に長じた者も, 時には失敗することがあるというたとえ。 弘法(コウボウ)も筆の誤り。 上手の手から水が漏れる。VIIさる【申】(1)十二支の第九番目。 年・日・時刻・方位などに当てる。 しん。(2)時刻の名。 今の午後四時頃。 また, 午後三時から五時までの間。 または, 午後四時から六時の間。(3)方角の名。 西から南へ三〇度の方角。
Japanese explanatory dictionaries. 2013.